足立区は西新井住宅展示場の相続相談会の相談員として呼んで頂いたり、事務所から意外に近いので、金融機関や他士業からもご紹介を頂き、よくお仕事をさせて頂く地域でもあります。
今回はそんな経緯もあり、ご紹介により足立区在住の個人の方からの税務調査に関するご相談と税務調査立ち会い依頼を頂きました。
※本事例は匿名かつ概略のみとし、事実関係を一部変更したうえ、ご本人の承諾を頂きご紹介しています。
税務調査に関するご相談はこちら
ご相談の経緯
ご相談者の方は、既に法人成りをしており、1期目の決算を終えるところで、税務署より個人事業主時代の税務調査をしたいと連絡を受けたということでした。
法人成り後は税理士と顧問契約を結んでいましたが、個人事業主時代はご本人が業務で多忙であったため奥様が代わりに足立地方合同庁舎の中にある足立税務署の無料相談会場に毎年行き、書類の書き方などを教えてもらいながら確定申告を行っていました。
通常、法人成りをしている場合には法人の顧問税理士にまずは相談して頂きます。
中小企業は法人と個人が深くかかわっているため、個人事業主時代の税務調査は法人にも大きく影響してくるためです。
このことは普通の税理士であれば、誰でもわかっている話なので、例え、個人事業時代のことはわからなくても対応してくれます。
しかし、「個人事業のことは知らないので自分で対応してほしい。」と言われてご相談にくるケースが後を絶ちません。
今回も顧問をしている税理士は相談には対応せず、若い担当者から「捕まってしまいますよ?」「税金を払えないなら自己破産すればチャラになる」などの無茶苦茶なアドバイス?があり、心配になりご相談にいらっしゃいました。
面談をしてわかった3つの問題点と解決方法
面談をする中で大きく3つの問題点がありました。
- 調査日程が決まっていた。(決められてしまっていた)
- 確定申告自体は行っていたが、確定申告作成会場で一度作ってもらった申告書を見本に毎年同じような数字で申告していた。
- 法人成りをした際に個人事業主時代の資料は必要なくなったと判断し、廃棄していた。
以下では上記3つの問題点について少し掘り下げて内容をご紹介していきます。
税務調査の日程が決められてしまっていた。
ネットで検索すると「調査日程は都合が悪ければ延ばすことが出来る」とすぐに出てきます。
確かにその通りなのですが、この辺りは調査官も慣れたもので、安易な調査日程の引き延ばしは難しく、場合によっては強硬?に日時を決められてしまいます。
特に今年はコロナ禍ということもあり、短い期間で多くの税務調査を実施したい調査官から日程調整を厳しく迫られるケースが多く、本件も調整がつかなければ取引先にお邪魔することになるなど、半分脅しのような形で強引に調査日時の決定がされていました。
そこで、調査日時の決定について抗議するとともに、間違いなく資料を揃えたうえ調査協力をすることを約束し調査日時を1か月延長してもらうことになりました。
無料相談会場等で作成した確定申告書は正しい?
個人の方で税理士へ申告書の作成依頼をしている方は割合としては少なく、多くの方は無料相談会場等で作成していると思います。
私自身も確定申告時期になると商工会、青色申告会、確定申告会場などから相談員担当の依頼があり、担当することがあります。
ただ、そのような際には何十人という相談者が訪れるため、数字の記入方法についてはアドバイスを行いますが、中身を詳しくチェックすることは出来ません。
しかし、納税者としては、相談員の方に聞いたので間違いがなく、税務署が受け取ってくれたイコール認められた申告だったと考える方が多く、売上が少なかった時代に作成した申告書に基づき毎年の確定申告書を提出している方も一定数いるようです。
本件でも税務署に提出したときに何も言われなかったので、問題がないと思っており、いざ税務調査といわれ多額の税負担が発生する可能性があることに困惑されている状態でした。
法人成りの際には個人事業主時代の資料を廃棄しないこと
税務調査で最も重要なものは領収書等の資料です。
資料がない場合には、税務署は推計課税という方法により課税を行います。(隠蔽行為に該当すると認定されれば、重加算税が賦課されることになります。)
また、消費税の納税義務者で原則課税方式が適用される場合には、消費税の納税額が非常に重くなってしまいます。
本件では法人成りをした際に個人事業主時代の資料については通帳を除き、すべて廃棄してしまっていたため、このままでは多額の税負担が生じることをお話しし、ご商売の流れ、書類のやり取りの流れを丁寧に聞いたうえで、過去の経験からどのようにして資料を集めていけばよいかも教えたうえで、延長してもらった1か月をかけて、関係資料の収集を行ってもらいました。
資料収集は非常に根気がいる作業です。
商売によってどのようなものが経費になるかはケースバイケースです。
過去の資料収集は、取引先も再発行に難色を示す場合も多く、人によっては途中であきらめてしまいそうになりますが、ここが踏ん張りどころということでお尻を叩き資料の収集を頑張ってもらいます。
調査結果
調査当日(臨場調査)は10時から始まり、お昼は取らずに13時に終了しました。
終了後は、約1か月かけて調査官と意見交換をし、追加資料などの提出に応じる必要がありましたが、こちらの主張を大幅に認めてもらったうえで、一部の修正事項を認め終了となりました。
調査連絡が来てから終わるまで3か月半と比較的長期間かかりましたが、当初想定された金額よりも大幅に減額になった事案となりました。
ご本人としても従来納付すべき額を生活費や遊興費に使ってきたこともあるため、その分と考え、今後支払っていくために更に仕事を頑張っていくとおっしゃっていたのが印象的な調査となりました。
税務調査に関するご相談はこちら