インボイス制度建設業

税務署はインボイスをどう利用しようと考えているのか?お客さんと一緒に考えてみた。


令和5年10月からインボイス制度が導入されます。

このインボイス制度は色々な思惑があると思います。

表向きは、今まで益税となっていた小規模事業者からもしっかり消費税を納めてもらい税収をあげようといったところかと思います。

また、電子インボイス制度まで検討されていることを考えると将来的には納税者の所得金額について把握をしやすくすることも視野に入れているものと思われます。

今回はこのような話を打合せでお客様としたときのことを対話形式にてご紹介します。

お客様との打合せにて

打合せ相手 Aさん 個人事業主 開業後10年 消費税の納税義務者(簡易課税選択)

Aさんの業務内容 内装工事業・電気機器の取付(エアコンなどの家庭用機器など)

打合せ内容:確定申告及びインボイス(適格請求書発行事業者)の登録申請

Aさん、今年は昨年に比べて大きく売上が伸びましたね。
令和5年についてもこの調子で頑張ってください。

ところで、インボイスについては今年の確定申告と一緒に申請を行ってしまって大丈夫ですか?

はい。お願いします。
私の場合、もともと消費税の課税事業者で簡易課税制度を利用しているため、今年の10月から請求書に登録番号の記載をする必要があるというだけで何も変わらないはずですから。

ただ私の知り合いはインボイス制度をよく理解しておらず消費税をもらわなければ登録事業者になる必要もないと思っている人が大勢います。

今まで免税の方だと消費税の申告自体をしたことがないですし、インボイス制度がまだ始まっていないだけに誤った理解をしている方が一定数いるようですね。

インボイス制度に対応しないことは今後の仕事量にも関係することがあるような重要なことですから慎重に検討する必要があると思います。

そうですね。

私が仕事をもらっている先からもインボイスに関するアンケートがきて、周りの仕事仲間に聞いたらインボイスの申請を見送ると答えていた人が一定数いることに驚きました。

ただ、そのようなに答えていた知り合いの中には明らかに私よりも売上があるはずなのに・・・・・と思った方もいたんです。
少なく見積もっても売上は2千万以上あり、絶対に消費税の課税事業者のはずなんですが何か得があるんでしょうか?

そうですか・・・・・。

その方の事情は分からないのであくまで推測の域は脱しませんが、Aさんの業種の場合、消費税の課税事業者であればインボイスの申請を出さないことは有利不利以外の理由も考えられるかもしれませんね。

有利不利以外の理由ですか?

はい。

今まで無申告だった人は登録番号について税務署へ交付申請したら商売をやっているのに確定申告が出ていないことを把握されてしまいます。

そのため、インボイスの申請をしたくても出来ないと言われています。

確かにインボイスを申請しないと答えた人の中には「今まで確定申告なんてしたことがない。税務署にバレるなんてよほど運が悪い奴だ」と答えていた人もいました。

今までは無申告者を税務署が把握することが難しかったでしょうから、そういう人が一定数はいますよね。

ただ、今回のインボイス制度の導入で無申告はある程度是正されてくるのではと個人的には思っています。

無申告の人が今までと同じようにインボイスについて対応しない方針だとしてもですか?

そうです。

無申告者がインボイスの申請をしなくても把握する方法はあると思います。

例えばAさんの回りの無申告者を見つけようと思ったら、Aさんの元請から提出される消費税の申告書から目星をつけることが簡単に出来るようになるはずです。

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これは消費税の計算式を理解していないと分からないと思いますので、簡単に消費税の仕組みをご紹介します。

消費税は原則的には

売上にかかる消費税 ー 経費などにかかる消費税 = 消費税の納税額

そして今度から「経費などにかかる消費税」のうちインボイスがないものは一定額差し引くことができなくなるわけです。

税務調査の現場でも消費税の納税額が理論値と違うので調査に来ましたということは過去に何度もありました。

何を言いたいかというと「経費にかかる消費税」が理論値よりも大幅に低い会社をピックアップし、その会社に税務調査を実施すれば、インボイスの登録をしていない外注先などの情報を容易に取得することが出来るということです。

税務調査は調査対象者だけを調査しているわけではなく、調査対象者と取引をしている事業者についても資料収集をしていきます。
インボイスが導入された後は、インボイス発行事業者でない事業者のものは特に収集したいはずです。

なるほど・・・・。

そして、そのインボイスを申請していない人の中には無申告者が一定数いる・・・。
インボイスが一つの踏み絵的なものになるわけですね。

そうです。

おそらく2~3年ぐらいたつと無申告者を中心とした調査が当面多くなるのではと思っています。

その証拠に令和5年度の税制改正大綱では無申告加算税の加重措置が記載されています。
これはその布石ではないでしょうか。

税務署は昔から最も悪質な納税者は無申告者であるというスタンスですから・・・。

インボイスを申請しない外注先が多い場合には、自社への税務調査も多くなるかも知れないということを考えておく必要もあるかも知れませんね・・・・。

そうですね。

電子インボイスも将来的には予定されているため、事業者の収入について把握を進めるつもりであることは明らかです。

まあ、電子インボイスは10年ぐらい先の話でしょうから、当面のインボイス制度の導入の狙いは個人的には大きく2つだと思っています。

1つは益税分の徴収。
これは表の理由。

2つ目は無申告者の炙りだし。
方法としてインボイスの申請を納税者に出させることにより第一段階で把握。それでも回避するためインボイスの申請をしない納税者については元請の調査による把握を容易にしたうえで根こそぎ把握。

Aさんが先ほどおっしゃっていた「踏み絵」という表現がぴったりな制度となっている気がしますね。

いや~、インボイス制度導入は色々な思惑がありそうで怖いですね・・・・。
今度、元請の社長へ今日の話をしてみます。

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