事業規模を拡大し法人成りした後は個人の税務調査なんて行われないと考える経営者の方がいます。
しかし、法人成りした後でも個人事業主時代の税務調査は行われます。
しかも、この法人成り後の税務調査立ち会いは比較的多くお話しを頂くケースでもあります。
そこで今回は法人成り後の個人への税務調査について過去の立ち会い事例を紹介したうえで、注意点などをご紹介したいと思います。
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法人成り後の個人事業主時代の調査事例(埼玉県吉川市)
埼玉県吉川市で建設業を営んでいる方の税務調査に立ち会いました。
このケースでは、既に法人成りをし、1年目の決算日が終了した後に税務署から個人事業主時代の調査連絡が入りました。法人の顧問をしていた税理士が税務調査の立ち合いに難色を示したため、ご連絡を頂きました。
相談を受けていくなかで、個人事業主時代の確定申告がいい加減であったことや個人事業主時代の資料をほとんど廃棄してしまっていること、更に支払いのほとんどが現金で行っていたことなど、次々にまずい状況が分かってきました。
また、初めての税務調査でどのように行動してよいか分からず、調査実施日を何度も延長したため、調査官から調査実施日も強硬に決められていました。
そこで、まずは、税理士が税務調査立ち会いをすること、税務調査を実施しやすい状況にすることを調査官と約束し、調査実施日の変更をお願いしました。
その後、調査実施まで少しの時間的猶予が生まれたため、お客さまと一緒に重要資料を検討し、資料を集めて頂きました。資料の収集は過去のものとあってすべてを揃えることは出来ませんでしたが、多くの方にご協力頂き、税務調査実施日までには税務調査に耐えうるための最低限の状況を整えることが出来きました。
そのかいもあり、臨場調査自体は半日程度で終了しました。
税負担については、過去にいい加減な申告をしていたため、多額にはなりましたが、当初の予想税額の半額程度で済み、完納できる金額に決着しました。
税務署から連絡があってから、終了まで約3か月という期間がかかった調査でしたが、
「これからまた一から出直す!!」と最後におっしゃっていたのが印象的な税務調査でした。
法人成り後の個人事業主時代についても税務調査は実施される
個人の方から税務調査の立ち会いについてご相談を頂く際、「もう個人事業を廃業し、法人成りしたのになぜ今更、個人事業主時代のことについて税務調査をされるのか?」とご質問を受けます。
法人設立をし、これから本格的に事業展開していくぞ!と思っている矢先、既に過去のことになっている個人事業主時代の税務調査なんて・・・・。と思う気持ちはわかります。
しかし、個人事業を廃業したことを理由にもう個人事業主時代の税務調査がされないということにはなりません。
法人成りの理由は様々でしょう。
・節税
・信用力強化
・取引条件であるため など。
しかし、少数ではあるものの一定数の方が、個人事業主時代の無申告や過少申告を解消するためといった理由で法人成りをしていることも事実としてあります。
このことは課税庁も当然理解しており、法人成りを税務調査の一つのタイミングとして捉えている可能性があります。
法人成り後の税務調査パターン
私が今まで対応させて頂いてきた「法人成り後に個人事業主時代の税務調査が実施される時期と想定される調査選定理由」は以下のようなパターンです。(選定理由はあくまで私が感じたこと)
- 法人の第一期目の決算終了後に税務調査が実施
・個人事業主時代と比べ急激な売上増加に伴い個人事業主時代の売上計上漏れを確認
・法人設立1年目から多額の売上。個人事業主としての申告がなかったため、個人の申告義務を確認
※このようなケースでは個人課税部門の調査官でも法人の申告内容を確認していることが多いように感じます。
- 法人の第一期目の途中で税務調査が実施
・個人の確定申告内容が過少申告を疑うような内容で、かつ、通常法人成りを検討する規模でないような申告内容。
・個人事業主時代の売上高が1千万円弱。その状態が数年間続いた後の法人成り。消費税の納税義務についての確認
大きな危険を伴う個人事業主時代の資料の廃棄
税務調査にて最も重要なものは領収書やレシートです。
法人成りした場合には、個人事業主時代のものを廃棄してしまう方がいますが、この行為は非常に危険な行為です。
廃棄してしまった後に個人への税務調査が実施されることになるとすべての領収書を再発行してもらうことは不可能です。
自分の事業は小さいし、周りも税務調査なんてされたという話も聞かないからと軽く考えず、自分にも税務調査は実施されるかもしれないと考え、7年間分の資料は手許に残しておきましょう。
法人成り後に個人事業主の税務調査。とるべき行動とは?
個人事業主時代から確定申告を税理士へ依頼している方は、依頼している税理士と連絡を取りましょう。
普通の税理士であれば、自身が内容を確認した申告に対する税務調査ですから、責任をもって対応してくれるはずです。
問題は個人事業主時代は自身で確定申告をし、法人成り後は税理士と契約している方です。
このようなケースでは顧問契約をしている税理士とまず連絡を取ることになると思いますが、個人事業主時代のことは顧問契約をしているわけではないし、申告内容もわからないので可能であれば自分で対応してほしいと言われてしまうケースも多いようです。
また、新設法人の場合、税理士本人ではなく、経験が浅い担当者が付いており、税務調査に十分な対応が望めないことも多くあります。
このような場合には、自分だけで税務調査対応せず、個人と法人は密接にかかわってくることを理由に税理士本人に立ち会いをお願いするようにしましょう。
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