AmazonなどのECサイトの発達によって、近年、取り扱う荷物の量が劇的に多くなった運送業は税務調査が多い業種として有名です。
下記は令和1年11月に国税庁が発表した平成30年度の個人の申告漏れが多い業種トップ10です。
運送業は実に10業種のうち3つもランクインしています。
そこで、今回は運送業に対する税務調査で指摘されやすいポイントを7つに絞り指摘内容についてご紹介したいと思います。
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収入計上時期・金額把握について
売上の計上額が適正であるかどうかは、どの業種でも最重要チェック項目です。
そのため、運送業においても売上金額の間違いや計上漏れがないかは必ず調べられます。
業種の特徴として、一般貨物自動車運送事業者は貨物輸送の安全確保の観点から運転日報や運行指示書など様々な業務資料の作成及び保管が法令上義務付けられています。
これらの資料を確認することにより収入金額が適正に処理されているかアタリを付けることが出来ます。
法令上作成義務がある資料と売上の整合性が取れているかは日々の処理で確認をしておきましょう。
車両の取得価格
運送業者の場合、車両の売買が他の事業に比べ多く起こります。
車両売買に関する税務は実務上頻繁にあることながら意外に難易度が高く誤りが多い取引でもあります。
車両を購入した場合、車両本体以外に自動車税などの税金、保険、リサイクル預託金、代行手数料など多くの費用がかかります。
諸費用の中には購入した時に経費にできるものもあればできないものもあり、更に消費税の有無も異なります。
これらの処理が誤っていると減価償却の計算や消費税申告の金額誤りにも繋がってしまうため、正しく処理をしておく必要があります。
【参考】車両の関する費用処理
①本体価格、カーナビなどの付属品
車両の取得価額に含まれます。ただし、カーナビなどの付属品を車両とは別に購入した場合には費用として処理できる場合があります。
②税金や法定費用
自動車税・自動車取得税・自動車重量税などの税金と、自賠責保険料、及び法定費用(検査登録費用・車庫証明費用)は、取得価額に含めず、費用として処理することができます。
③リサイクル関連費用
契約書に記載されているリサイクル関連費用とはシュレッダーダスト料金・エアバッグ類料金・フロン類料金・情報管理料金・資金管理料の総称をいいます。資金管理料金は、預託資金の管理手数料であるため、自動車購入時に費用処理できますが、その他はリサイクル預託金として処理します。
④代行費用
検査登録手続代行費用・車庫証明手続代行費用は、法定費用に関する手続の手数料であるため、購入時に費用処理できます。納車費用は、自動車の購入のために要した付随費用に当たるため、取得価額とする必要があります。
車両の下取り
車両を購入する際、今まで使用していた車両を下取りに出すことは一般的なことですが、単なる値引きとして処理を行ってしまっているケースが散見されます。
特に個人事業主の場合には、事業用車両の下取りは総合譲渡所得に該当することを失念していることが多くあります。
事業所得に該当しなくても消費税の計算上は、車両の下取価格は課税売上に該当します。
特に下取価格が大きい場合には消費税の納税義務判定や簡易課税判定に重要な影響を及ぼすことになるため注意が必要です。
自動車任意保険の取り扱い
自動車任意保険の契約はほとんどの場合、1年間となっている場合が多いと思いますが、中には2年以上の長期のものがあります。
契約期間が1年のものであれば、短期前払費用として処理し、
経費算入が可能ですが、1年を超える契約のものは期間按分をする必要があります。
多くの車両を所有している場合には、経費削減のため、長期で自動車任意保険に加入している場合もあるため注意が必要です。
消費税(軽油引取税)
運送業ではトラックを利用しているケースが多く、この場合にはガソリンの代わりに軽油が利用されている場合が多くあります。
軽油を購入した場合、料金のうち軽油引取税というものが入っています。
この軽油引取税は消費税が課されないことになっています。
この理解が誤っている場合、一つ一つの取引金額はそれほど大きくなくても、年単位ともなれば、多額の税負担が生じてきます。
そのため、日頃から軽油引取税の処理をしっかり行っておく必要があります。
人件費と外注費(庸車)の区分
ある個人への支払いが給与か外注費のいずれに該当するかは、税務調査においてよく問題になる事項です。
運送業の場合には、ドライバーとの契約が業務委託契約(庸車費用)か、雇用関係(給与)のいずれになるのかが問題となります。
仮に庸車費用として処理していたものが、給与に認定されてしまった場合には、消費税の追加納付、源泉徴収義務違反による多額の税負担が生じるため、しっかり説明できる書類や事実関係を整理しておく必要があります。
一般の方は業務委託契約としていれば問題がないと考えがちですが、給与か業務委託かの区別は契約書があるだけでは不十分です。
実際の実務においては以下の基準を総合的に勘案して決定がされます。
条件を満たしているかチェックをしておきましょう。
参考:消費税法基本通達1-1-1(個人事業者と給与所得者の区分)
事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいうから、個人が雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、当該他の者の計算により行われる事業に役務を提供する場合は、事業に該当しないのであるから留意する。したがって、出来高払の給与を対価とする役務の提供は事業に該当せず、また、請負による報酬を対価とする役務の提供は事業に該当するが、支払を受けた役務の提供の対価が出来高払の給与であるか請負による報酬であるかの区分については、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうかによるのであるから留意する。この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。
- その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。
- 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
- まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
- 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。
廃車に伴う部品の収入 廃材の収入
意外に申告で漏れてしまうものとして、本業に付随する雑収入があります。
これも業種は問わず税務署から狙われるものです。
運送業でいえば、廃車に伴う部品売買や廃材・スクラップの売却収入などです。
このような雑収入は税務署も収入計上が漏れていることをよくわかっており、買取業者に税務調査を行った際に資料せんとして国税の内部システムに保存されています。
そしていざ、税務調査となれば、その資料せんから収入が漏れていないかを確認しています。
うっかり収入漏れがないように気を付けましょう。
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