先日、歯科医師の先生から税務調査に関するご相談を頂きました。
顧問税理士もついてはいたのですが、代表の税理士は高齢で調査には立ち会えないと断られ、奥様が主に一人で対応されたとのことでした。
しかし、調査も想定していたよりも長引き、指摘事項も多くあげられ、更に調べている様子で、この先一人で乗りきれるか心配になり、ご相談にいらっしゃいました。
そこで、調査の進捗度や指摘事項をお聞きし、整理したうえで、今後どう税務調査に向き合えばよいか?ということを一緒に検討しました。(調査自体はその後2週間程度で終了したとの連絡を頂きました。)
今回は実例も踏まえ、歯科医師に対する税務調査で問題になる以下の5つのポイントをご紹介します。
- インプラントやホワイトニング等に関する自由診療売上の計上もれ
- 金歯などの廃棄金属の雑収入漏れ
- 棚卸在庫(調査対象の最終年度は特に注意)
- 専従者給料や人件費
- 交際費
税務調査に関するご相談
自由診療売上の計上漏れ
歯科医師の売上は大きくわけ、社会保険料収入と自由診療収入に大別できるかと思います。
社会保険料収入については、レセプトの点数により金額が確定するため誤魔がきかず、あまり問題となりません。(窓口負担金が保険点数から計算した理論値と大きく乖離するような場合には注意が必要です。)
これに対し、自由診療収入は歯科医師に対する税務調査で最重点確認ポイントです。
自由診療は、インプラント、歯の矯正、ホワイトニングなど治療内容も多岐にわたり、更に金額が大きくなるにも関わらず、社会保険料収入のようにチェックがかかりません。
また、治療が長期にわたるものもあり、売上計上時期の問題など税務署がチェックしたい項目を多く含んでいるのです。
そのため、カルテ、アポイント帳、業者からの納品書を確認し、インプラント等の高額収入の計上漏れがないかチェックする必要があります。
また、自由診療収入の割合が高い医院については、消費税の課税事業者にも該当することになりますので注意が必要です。
金歯などの廃棄金属の雑収入漏れ
日々の診療において、患者さんの歯に入っている金属を回収することも多くあろうかと思います。
金歯などの廃棄金属は、業者が買い取ってくれますが、その売却代金は収入に計上する必要があります。
税務署は、買取業者に税務調査を行い、売買実績などのデータを入手していることが多く、データと付け合わせを行うことにより容易に収入漏れを把握できる状態で税務調査を実施しています。
廃棄金属の売買は現金精算であることも多く、うっかり計上漏れが生じないように注意しましょう。
棚卸在庫(調査対象の最終年度は特に注意)
治療に使う材料を経費として計上できる時期は、実際に治療をして利用した分だけです。
そのため、年末には在庫の計算し、経費から差し引く形で申告を行います。
歯科医師特有の論点としては技工所に材料を預けている場合の在庫部分の計上忘れです。
技工所から送られてくる報告書をしっかりチェックして漏れが生じないように注意しましょう。
専従者給与や人件費
配偶者や親族に対する給与は、歯科医師特有の問題ではなく、個人の税務調査全般でチェックが行われる項目です。
専従者の給与は一般的には認められませんが、以下の2つの要件を満たすことにより経費になります。
- 青色事業専従者給与に関する届出を提出し、その届出の範囲内で支給すること
- 専ら事業に従事していること
「専ら従事していること」に該当するかどうかの判定は実際難しいですが、明らかに仕事をしていない場合などは特に税務調査で厳しく追及されるため注意が必要です。
交際費
一般的には、医師は業者さんから接待を受ける側です。
そのため、飲食費などは個人的な支出ではないか?と疑われます。
定休日を確認し、定休日ばかりに飲食費が計上されていれば、家族での食事代を経費に入れたのではないか?家族でないなら誰といったのか?その人は仕事に直接関係があるのか?目的は?など厳しく追及されます。
飲食費用が個人的支出でないことをしっかり説明出来るように、領収書に一緒にいった方の名前や人数等を記入しておきましょう。
税務調査に関するご相談
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