科目別注意点

税務調査で確認されやすい経費(外注費)

税務調査では調査官がよく確認する勘定科目があります。

売上は当然最重要項目ですが、それと同じくらい重要な科目に外注費が挙げられます。

今回はなぜ外注費という科目が狙われやすいのかを過去の実際事例も簡単にご紹介しながら説明したいと思います。

給与と外注費の関係

給与と外注費の区分は実務上非常に難しいですが、外注費を給与として税務調査で否認された場合には大変な痛手となります。

消費税を原則課税で計算している場合には、外注費にかかる消費税を引くことができなくなりますし、本来給与を支払う際は源泉所得税を控除し、給与支払者が徴収した源泉所得税を納付する必要があります。これに加えて過少申告加算税、不納付加算税、延滞税と踏んだり蹴ったりの状態となります。

従業員と外注先を同様に扱っており、契約上(名目)しか変えていない場合をよく目にしますが非常に危険です。

調査官も外注費を給与として認定できると追徴税額が大幅に増えることを十分理解しているため意識して外注費を確認しています。

外注費を給与認定されないように業務委託契約書を作成し、従業員と外注先をしっかり区別しておく必要があります。

参考【外注費と給与の判定として実務上判断要素とされている基準】消費税法基本通達1-1-1

事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいうから、個人が雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、当該他の者の計算により行われる事業に役務を提供する場合は、事業に該当しないのであるから留意する。したがって、出来高払の給与を対価とする役務の提供は事業に該当せず、また、請負による報酬を対価とする役務の提供は事業に該当するが、支払を受けた役務の提供の対価が出来高払の給与であるか請負による報酬であるかの区分については、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうかによるのであるから留意する。この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。

(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。

(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。

(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。

(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。 

遭遇ケース
遭遇ケース

従業員Aさんを業務委託契約書を作成して外注費として処理。

納税者としては業務委託契約を締結していたため問題ないと考えていたが日々の業務内容などの変化はなく、従業員時代と同様に道具の支給や経費精算を行っていた。Aさんは専属下請として他の仕事も受けていなかった。

税務調査により、実態は給与であると否認され、多額の税負担が発生。

外注費の中身は何だろう?

外注費に本来外注費ではないものが入ってしまっていることを目撃したのは一度や二度ではありません。

例えば、取引先へのリベート、取引先従業員への袖の下的なものです。

調査官も外注先の中で怪しそうなものは経験でわかります。

過去に遭遇して大問題に発展した事例として

遭遇ケース1
遭遇ケース1

奥さんが経理をしていた会社で、社長が愛人へ支払っていた手当や家賃を外注費として処理していた・・・・(当然奥さんは知らなかった)。

調査が進むにつれ奥さんが内容を把握。調査もさることながら、調査後に大変な事態に・・・・・。

遭遇ケース2
遭遇ケース2

外注先の従業員から、孫請けに直接支払ってほしいと依頼。その従業員とは懇意にしていたため少しおかしいなとは思いつつ支払いを行った。

税務調査により孫請けの会社はすでに倒産している会社であることが判明。

反面調査により、従業員の横領が確認され、外注先との取引は無くなり、調査においても仕入税額控除要件違反を指摘されてしまった。

税務署内部の資料せんとしての価値

税務調査に立ち会っていると外注先の情報を一生懸命にメモしている調査官がいます。

確認している理由は大きく2つ。

調査対象の納税者について支払った外注費の内容を確認する意味と外注先を調査する際の情報収集です。

観察

外注先の情報は税務署はKSKシステム(国税総合管理システム)というものに集約されます。そして、外注先の調査の際に役に立たせるわけです。

税務調査は調査先だけではなく、調査先と取引をしている相手のことも同時に調べているのです。

調査されている納税者が外注費として計上している金額と外注先で売上として計上している金額は本来一致しているはずです。その金額に乖離がある場合にはどちらかが嘘をついているわけです。

税務署はそのために必死に税務調査の際に外注先の情報を拾っていくのです。

おそらく、今後はインボイスがない外注先などを多く情報としてもっていくものと思われます。インボイスがない事業者はインボイスを出せない何らかの情報を抱えている割合が多いからです。

遭遇ケース
遭遇ケース

弊所では税務調査立ち会いについて紹介されることが多くなっています。

ご紹介頂き対応させていただく方の大半は実際に税務調査立ち会いをさせて頂いた方と取引をしていた方やその関係者です。

ある会社と取引をしている個人事業主が毎年1人づつ調査に選ばれて、毎年ご紹介を頂いているなんてケースも・・・・。

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