税務調査に関する基礎知識

個人事業主が自宅の一部を事務所利用する場合には注意が必要(住宅ローン控除編)

個人が住宅ローンを利用し、マイホームを建てたり、増改築などをしたりするときに一定の要件を満たすことで受けられる住宅ローン控除は、確定申告時に申告すれば、所得税等が軽減・還付されることは一般の方でも多くの方が知っている最も有名な節税です。

しかし、住宅ローン控除はその知名度にかかわらず内容に意外と複雑な部分があります。

特に注意が必要なのが個人事業主の方が住宅ローン控除を受けている場合です。

個人事業主の場合は自宅の一部を事業所としている方も多く、住居にまつわる経費の計上方法を一歩間違えると、住宅ローン控除の適用から外れてしまうこともあります。

今回は住宅ローン控除の適用要件を振り返りながら、その注意点を確認します。

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住宅ローン控除を適用するための適用要件

注意点を正しく理解するには住宅ローン控除の適用要件を改めて確認する必要があります。

以下は代表的な5つの要件です。

  1. 新築又は取得の日から6か月以内に居住の用に供し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること。
  2. この特別控除を受ける年分の合計所得金額が、3,000万円以下であること。
  3. 住宅の床面積が50平方メートル以上であり、床面積の2分の1以上の部分が専ら自己の居住の用に供するものであること。
  4. 10年以上にローンであること
  5. 一定の期間において、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていないこと。

 

このうち、個人事業主が最も気を付けたいのが適用要件3です。

ポイントは『床面積の2分の1以上の部分が専ら自己の居住の用に供するものであること』です。

つまり、住宅ローンの対象となっている自宅について事業割合を50%以上として経費算入した場合、住宅ローン控除を受けることが出来なくなります。

また、「専ら自己の居住の用に供するものである」必要があるため、事業割合が50%未満である場合には事業で使用する部分には原則住宅ローン控除を適用できません。

ただ一方で、租税特別措置法では事業割合が10%以下である場合には、住宅ローン控除を全額受けることができると定められています。

住宅ローン控除を受ける方が得なのか、経費として計上する方が得なのか、事前に計算した上で確定申告を行わなければ、思いもかけず税負担の増加を招く可能性もあるため注意が必要です。

 

参考1:租税特別措置法令第26条第6項

法第41条第1項の個人が新築をし、若しくは取得をした同項に規定する居住用家屋若しくは既存住宅(その者の住宅借入金等にこれらの家屋の敷地の用に供する土地等の取得に係る住宅借入金等が含まれる場合には、これらの家屋及び当該土地等)又は同項に規定する増改築等をした家屋の当該増改築等に係る部分のうちにその者の居住の用以外の用に供する部分がある場合における同項の規定の適用については、次に定めるところによる。

一 当該居住用家屋又は既存住宅のうちにその者の居住の用以外の用に供する部分がある場合には、当該居住用家屋の新築若しくは取得又は当該既存住宅の取得に係る住宅借入金等の金額は、当該金額に、これらの家屋の第1項各号に規定する床面積のうちに当該居住の用に供する部分の床面積の占める割合を乗じて計算した金額とする。

参考2:租税特別措置法41条の29

措置法令第26条第6項の規定は、その家屋又は当該家屋の敷地の用に供される土地等のうちにその者の居住の用以外の用に供される部分がある場合に適用されるのであるが、41-27により計算したその者の居住の用に供される部分の床面積若しくは土地等の面積又は増改築等に要した費用の額がその家屋の床面積若しくは土地等の面積又は増改築等に要した費用の額のおおむね90パーセント以上に相当する面積又は金額であるときは、同項の規定にかかわらず、その家屋の床面積若しくは土地等の面積又は増改築等に要した費用の額の全部がその者の居住の用に供する部分の床面積若しくは土地等の面積又は増改築等に要した費用の額に該当するものとして措置法第41条第1項又は第6項の規定を適用することができるものとする。

 

まとめ

事務所兼自宅で事業を行う事業者は、以下2つのことに注意しましょう。

  1.  ・事業割合が50%未満でないと住宅ローン控除を受けることは出来ない 
  2. ・全額住宅ローン控除を受けるには事業割合が10%以下である必要がある

 

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