インボイス制度

インボイス導入により税務調査で起きた変化。

ご存じの通り、令和5年10月からインボイス制度の導入が始まっています。

消費税の納税義務者で本則課税が適用される事業者の場合、取引先が適格請求書発行事業者であるか否かが非常に重要となってきますが、経過措置もあり、当面は大きく税務調査に影響はないと個人的には思っていました。

しかし、4月から始まっている実際の税務調査立ち会いを経て、その認識が甘かったと痛感させられました。

以下では実際の税務調査で起きている変化についてご紹介します。(個人的感想)

※守秘義務の関係上、事実を一部変更しています。

インボイス導入前

消費税の計算方式は大きく分けて、本則課税と簡易課税に分けられます。

本則課税は売上等により預かった消費税から経費等で支払った消費税を差し引いて納税額を計算します。ここで重要なことは差し引く消費税については一定の事項を記載した帳簿が必要であるということです。当然、領収書などの保管義務もあります。

しかし、個人事業主の方で帳簿を付けていない方が多いこともあり、実際の税務調査の現場では帳簿がないので経費等で支払った消費税を引くことは出来ないと言われたことは稀でした。

これは法人と個人の大きな違いでしょう。

法人であれば、ほとんど税理士が関与しているのに対して、個人事業主の場合、税理士が関与している割合が低くく、白色申告者など帳簿を作成していない人が多いことが起因しているものと推測できます。(白色でも作成義務はありますが・・・・)

インボイスに対する税務署のスタンスは?

インボイス導入が令和5年10月からの開始であったため、インボイス制度が導入されてからの初めての確定申告書が調査対象年分とされる調査は令和6年4月以降に始まっています。

個人的にどのような扱いになるのか非常に興味をもっていました。

冒頭で記載していた通り、当面はそれほど大きな違いはないのでは?と思っていました。

その理由は、通常このように国民に負荷がかかるような改正があった場合、国民感情に配慮し、税務調査ではそれほど厳しくしない傾向があることやインボイス導入前の取り組み方針などを示した資料にも以下のような記述まであったからです。

インボイス制度後の税務調査の運用について

○ これまでも、保存書類の軽微な記載不備を目的とした調査は実施していない。
・ 従来から、大口・悪質な不正計算が想定されるなど、調査必要度の高い納税者を対象
に重点的に実施。


○ 仮に、調査等の過程で、インボイスの記載事項の不足等の軽微なミスを把握しても、
・ インボイスに必要な記載事項を他の書類等※で確認する、
※ 相互に関連が明確な複数の書類を合わせて一のインボイスとすることが可能。
・ 修正インボイスを交付することにより事業者間でその不足等を改める、といった対応を行う。


○ まずは制度の定着を図ることが重要であり、柔軟に対応していく。

※インボイス制度の周知広報の取組方針等について 令和5年8月25日発表資料 P10

税務調査でのやり取り

令和6年4月以降に立ち会った税務調査の件数自体が少ないため、これを果たしてサンプルといえるかどうかという問題はあるにせよ、例年だったらほぼ問題ないような個人事業主の税務調査でも、インボイスがない取引先について経過措置(80%控除)の適用を巡り、意見の相違が発生しています。

経過措置(80%)は帳簿及び請求書等の保存が要件ですが、当初、帳簿等の保存がないことを理由に経過措置の対応は不可だと言われたのです。

これには非常に驚きましたが、同時に今後の税務調査は今まで以上に帳簿作成、書類保存について重要性を増していくと感じました。

8月以降本格化していく税務調査の現場でどのような取り扱いが主流になるかは現時点は不透明ですがインボイス導入による税務調査の変化には今後も注目です。

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