事前に情報収集をかなりされている方から税務調査(臨場)前に修正申告書を提出することについて質問をいただくことが増えてきています。
税務調査の内容や当初申告の状況は人それぞれであるため、メリット、デメリットを総合勘案して最終判断を行って頂く必要があると個人的には思っています。
今回は実際の税務調査での対応事例をご紹介します。
※事案は匿名かつ概略のみとし、事実関係を一部変更したうえ、ご本人の承諾を頂きご紹介しています。
ご相談の経緯
相談者の方(以下、Tさんといいます)は20年ほど前から内装業を個人事業として行ってきました。
毎年、商工会議所に確定申告時期は行き、書き方などを教えてもらいながら申告をしてきたため、税務調査なんて自分には関係ないものと思っていたそうです。
そんな中、税務調査の連絡があり、なぜ自分が選ばれたのか不安になり、再計算をしたところ、売上の計上漏れが見つかったとのこと。そのことで一気に不安になり、税務調査専門の税理士へ相談したところ、臨場前に5年分の修正申告を行う必要があるといわれ、130万円を超える金額の見積りであったことから弊所に相談に来られました。
面談した結果わかった問題点
面談して分かった問題点
・売上の一部が計上漏れとなってしまっていた。
・適格請求書発行事業者となっていない外注先への支払いが多くあったが、全額を仕入税額控除として処理してしまっていた。その他消費税の計算上の誤りが多く散見された。
・売上を入金時期に計上していた。(期ズレの問題)
・家事按分が適切に行われていない経費や事業とは関係がないと思われる経費が集計されていた。
問題点の検討と対応
来所頂き、面談及び申告書を拝見すると確かに問題点が多くあることが分かりました。
売上の計上漏れがあるため、修正申告を事前に行う選択肢もありましたが、よくよく本人から話を聞いていくうちに当初の確定申告では入れ込めていない経費もあることが分かりました。
他の事実関係も面談で整理するなかで、事前修正申告を行う場合には弊所の報酬も多くなってしまうことや修正申告を行った場合に想定されるメリットやデメリットについてもお話しました。
そして、お話頂いた内容を調査官にしっかり説明をしていただければ税務調査自体もご自身だけで対応することは可能だとお伝えをしました。
しかし、Tさんとしては、一人で税務調査を受けることを考えると気が滅入ってしまい、変な受け答えをして誤解される可能性もあるし、上手に説明できるかも不安なため一緒に税務調査の対応をしてほしいとの要望でした。
そこでスムーズに税務調査が終わるように調査前の資料準備、申告内容から予測される税務署が確認したい事項などについて取り纏めをお手伝いさせていただくこととなりました。
税務調査の当日
臨場日(調査当日)には男性の調査官1人(統括官)と女性1人が来ました。
連絡段階では女性2人の調査官がくる予定でしたが当日女性調査官の一人が家庭の事情があり、その上司である統括官が代役となったとのことでした。
挨拶後に統括官から今日は10時から16時頃までの丸1日ということで良いでしょうか?という確認が改めて行われた後にすぐに調査開始となりました。
まずはTさんに業務内容、業務を行うようになったきっかけなど一般的な質問がされました。
しかし、Tさんも緊張のせいか統括官の質問にしっかり答えられないこともあり、調査の進捗が通常の調査に比べゆっくりでした。そこで時間を有効利用してもらうためにも、一般的な質問が終わった段階で私のほうから税務署が確認したいであろう事項について資料を見せながら説明をさせてもらいました。
すると統括官も、意図を理解してくれ、
「実は税務調査の種明かしになってしまうのですが先生が説明してくれたことが私たちが今回の税務調査で最も確認したい点でした。その点をしっかり確認して頂きまとめてもらっていますので、1日予定であった税務調査も午前中だけで終わらせていただきます。」
といってくれました。
その後、いくつかの必要書類を確認しコピーなどをもって帰りましたが、調査自体は事前通知通りの3年分で午前中に終了しました。
まとめ
本件については、偶然にも統括官が税務調査を行ったため、調査の方針決定が速かったといえますが、税務署がなぜ税務調査をしたいのかという理由をしっかり事前に把握しておいたことがスムーズな税務調査終了へと繋がりました。
また、売上が漏れてしまっている場合でもすべてのケースで修正申告を提出することが最適な答えとは限らないということも理解しておく必要があります。
税務調査をスムーズに終わらせるには税務署がなぜ税務調査の対象としてあなたを選んだのか理解をしておくことが非常に重要です。