税務調査の立ち会い業務を受けていると「税務調査(臨場)前に修正申告を行うべきか?」という質問を度々いただきます。
おそらくネットなどで事前に情報収集をする中で調査前に修正申告書を提出することにより加算税の軽減が図られる場合があることを知り、そのような質問をされるのでしょう。
他のサイトでも臨場前に修正申告を提出すべし!!といった意見の税理士も一定数いるように思えます。
確かに法律論からいえば正解だと思います。
しかし、税務調査の実務上は絶対的な正解とは言い切れません。
なぜならば、税務調査は調査官という相手がおり、納税者の申告状況も人それぞれだからです。
以下では実際に税務調査の事前通知後に相談に来られた方(個人事業主)と税務調査前に修正申告を提出するかどうかを検討した際の会話をご紹介します。
相談事例
【 相談者情報 】
相談者:Aさん(個人事業主)
申告状況:7年ほど前に個人事業主として開業。過去数年分の申告状況はいい加減で資料もあまり残っていない。
申告書に問題がある場合には、調査前に事前修正を行うべきでしょうか?
ただし、税務調査は法律論だけで判断できないことが多く、状況に応じて判断することが必要です。
事前修正申告を行うといった税理士さんは報酬が全部で130万円かかると言われました。
もう1件については事前修正は行わないが70~80万円程度かかると言われました。
事前修正申告をすすめてきた税理士さんの口調としてはそのようなニュアンスでしたが・・・・。
調査連絡後に修正申告を行うことのメリットとデメリット
税務調査の連絡がきた後に修正申告を行う場合にはメリットとデメリットがあると思います。
以下では過去の経験からメリットとデメリットをご紹介します。(個人的私見であることにご注意ください)
メリット
加算税の軽減
加算税の負担軽減効果が期待できます。
特に重加算税は過少申告加算税に比べ、加算税の率が上がるため恐怖です。
調査の短縮化の可能性
調査によっては、調査前に税理士が修正申告書を提出することにより、実質半日程度で調査が終わる場合もあります。
デメリット
調査が厳しくなる可能性
事前修正を行おうとすると税務署のほうから提出を見合わせてほしいと連絡がくることがあります。つまり、税務署としてはあまり歓迎することではありません。
過去には調査開始前から明らかに不機嫌な態度で、「よく短期時間で修正が出来ましたね?」と言って調査開始後すぐに質問応答記録書を作成した調査官もいました。
重加算税を回避する意図で事前申告をしたと思われた場合、税務署側は7年遡及をしてやろうと考える傾向が強くなったり、調査官の対応が厳しくなり、結果的には負担が重くなる場合も・・・・?
修正申告作成に伴う税理士費用の負担
修正申告を税理士に依頼した場合には費用負担が重くなります。修正申告一択しかない場合には税理士サイドの都合による場合も・・・・?
調査対象期間の拡大
当初の調査対象期間は3年間であることがほとんどですが、修正申告を行う場合、多くの場合で5年分の修正申告を行う必要が生じます。つまり、本来は3年で終わるような調査であっても5年分の負担が生じることになります。
修正申告の作成期間が短いことによる弊害
もともと関与がない方の修正申告を行うということは一から申告書を作ることになります。そのため、相当の時間が必要となります。
弊所で税務調査前に修正申告を行う場合、まずはヒアリングを行い、その後に不足資料の収集をお客様にお願いし、資料が集まった段階でようやく申告書作成に取り掛かれるため、最短でも2週間はかかっています。
当然、修正申告を提出するために税務署に対して調査日を延期してくれとはいえません。
無理に修正申告を行う場合には資料収集が間に合わずに過大な修正申告を行うリスクもあると思われます。
まとめ
税務調査前の修正申告提出には、メリットとデメリットが存在します。
その判断は非常に難しいため、税務調査の経験が豊富な税理士を近隣地域で探し、過年度の申告書や資料をもっていき、対面でしっかり相談することが必要です。
修正申告を行う場合には特に時間との闘いとなりますので、早めに行動を起こす必要があります。
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