税務調査に関する基礎知識

クラウド会計の罠? パート2

税務調査が実施される原因で最近増えていると個人的に思っているのが「確定申告をよく理解せずにクラウド会計を利用して申告書を作成したこと」です。

以前、「クラウド会計の罠」という記事を書きましたがその傾向が強くなっています。

特にクラウド会計は会計を理解していなくても何となく出てきてしまうため、中にはとんでもない間違えをしていることもあります。

以下では実務を通じてクラウド会計を利用しているからこその間違いをご紹介します。(クラウド会計はそれぞれ操作方法が異なるためすべてのソフトで当てはまらない場合もあると思います)

確定申告書が勝手に出てきた?

最近は会計ソフトを導入する際の半分程度がクラウド会計かデータはクラウドにおいているような方法をとっています。

確かにクラウドでデータがあれば、いちいち会計ソフトがダウンロードされているパソコンを開かなくてもネット環境が整っていればどこでも作業が出来るのでダウンロード型よりも便利です。

最近のクラウド型会計ソフトは利用者が便利に使えるように請求システム、レジ、クレカ、給与ソフト、ネットバンクとあらゆるデータと連携し、そこから容易に会計帳簿の作成が行えるようになってきており入力作業を大幅に減らすことが可能です。

更に個人事業者が確定申告を行う際に会計知識がないと苦労する源泉所得税もチェック一つで計算をしてくれる機能も備わっており、確定申告書も日々の入力がしっかり行われていればあとは所得控除で該当する箇所のチェックを行っていけば作成が出来てしまうという何ともありがたい機能が満載です。

領収書を一枚一枚手打ちしてきた従来の経理処理に比べてしっかり機能すれば各段に作業効率が向上します。

しかし、税務調査の立ち会い相談を受けていると、皆さん一同に「確定申告書は勝手に出てくるようになっている」と言います。そのような場合、クラウド会計を信じ切って中身はほぼ確認せずに自動集計されたものを提出してしまっているのです。自動で作成されているものが正しいかどうか判断できるぐらいに税金の知識がある場合には自動集計はとても素晴らしい機能だと思いますが、チェックが出来ていない状態での自動作成は非常に危険です。

自分で会計入力が出来る方であれば当然チェックし、誤って処理された部分の修正ができますが、自動で行われているからこそ誤りを発見し修正が出来ない人が多くなってきている気がします。

クラウド会計ならではの誤り?どのような誤りが多いのか?

最近、クラウド会計を利用していた方に対して税務調査が実施された際に指摘された事項はどのような誤りが多かったかのかをご紹介します。

源泉所得税の誤り

・ある会計ソフトでは売上について源泉所得税が徴収されて入金されている場合にはチェックを行えば勝手に自動的に源泉所得税を計算してくれて仕訳がされるものでありました。しかし、源泉徴収されていないものについてもうっかりチェックをしてしまった結果、多額の還付が発生。その結果、税務署に対して違法な還付請求をわざと行っているのではないかと疑い税務調査が実施された。

・ある会計ソフトでは源泉所得税の計算を自動計算する際に税込金額に対して自動計算される仕組みとなっていました。しかし取引先からは税抜金額に対する源泉所得税が計算されており、その差額が積み重なり大きく納税が相違。結果、税務調査先として選定された。

いずれも毎月の請求書としっかりチェックしていれば起きなかったミスではありましたが、自動計算を鵜呑みにした結果、誤った申告書が作成されていました。

現金や預金ベースでしか考えない

クラウド会計を利用される多くの方がシステムと連携を行っています。しかし、すべての処理を連携だけで終わらせることは出来ず、通常は一部のシステムと連携し、足りない部分は手動で行っている場合がほとんどです。会計知識が乏しい場合には手動で行わなければならない部分が抜けていることが多く、ネットバンクとの連携だけで処理が終わると思ってしまっている方が非常に多くいます。

・請求システムとの連携が行われていないことにより未入金の売掛金の計上漏れを指摘された。

・請求システムとの連携が行われておらず、消費税の納税義務判断を誤り、消費税の無申告を指摘された。

期ズレの話はクラウド会計特有ではありませんが、手動で行えば気になることも自動だからこそ気にならなくなってしまう部分です。

初期設定の問題で誤り

初期設定の問題でずっと間違いつづきの申告書を提出しているケースもあります。

・消費税の初期設定でミス。税込経理方式と税抜経理方式を誤って選択した結果、誤った申告書を何年も作成していた。

インストール型にくらべ、クラウド型の会計ソフトは初期設定のステップが多いです。初期設定時に誤った設定をしてしまうとずっと誤った申告を行うことになります。

連動による不具合が解消されない。気づかない、修正できない

連動により、自動で決算書が出てきた場合、数字的にはおかしなものとなっても気が付かない場合が多く、問題が発生して初めて誤りがあったことが分かります。

・青色決算書にマイナス表示の科目があったが、そんなものだろうと思い放置。融資を受ける際になり決算書が誤っていることが判明。誤った処理を続けてしまっていたため何が誤っているのか不明で修正が困難に。当然金融機関には説明が出来ない状況となってしまった。

決算書の重要性を融資の際に認識されるケースは非常に多いです。

会計帳簿としての機能を満たしていない

自動連動する範囲によってはそもそも会計帳簿といえないレベルのものが出来上がることがあります。

・連動設定にやり方がそれぞれのシステムにより異なるため、連携が行えるものだけを連携した。その結果、会計処理の大半が行われなかったにも関わらず、決算書や申告書は自動で作成されたことから、問題ないものと思い込み申告を行っていた。税務調査となり、会計帳簿の形を成していないと指摘された。

クラウド会計もすべての処理が自動で行われるわけではありません。

会計の大部分が処理されていない場合、青色申告特別控除が認められないこともあります。

まとめ

クラウド会計はインストール型会計ソフトに比べて便利です。しかし、個人的には会計の知識がある人が使い、十分なチェックを行うことが前提です。

また、すべてを自動で行うよりも手動を中心として、自動で行える部分を探して徐々に連携部分を増やすほうが上手く活用できている場合が多いように感じています。

申告書は自動で作成されることはありません。

しっかりチェックを行い取り返しが出来ないミスが起きないように注意しましょう。

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