無申告

消費税の納税義務を意識して売上を1000万以下としている場合には重加算税が課される!?

インボイスが導入されてから1年半ほどが経過し、その取扱いにも慣れてきている方が多くなっているように感じます。

適格請求書発行事業者の届出がいわゆる「踏み絵」のような役割となり、この制度を利用した税務調査がそろそろ本格化してくるころだろうと思います。

今年度は今まで以上に消費税の納税義務があるにも関わらず、今まで消費税が無申告であった方たちが税務調査の対象となると思われます。

無申告重加算税の負担は相当なものとなる。

消費税が無申告だった方たちが直面する大きな問題が消費税の無申告に対する重加算税です。単なる過少申告と無申告加算税、無申告重加算税はその重みが違います。

単なる過少申告加算税の場合 10%+8.7%(R7の延滞税割合)で延滞税の計算期間の特例あり 

無申告重加算税の場合 40%+8.7%(R7年の延滞税割合)で延滞税の計算期間の特例が適用されないため無申告時から延滞税がかかり続けます。

例えば、5年前の消費税について税務調査により指摘がされ納税することとなった場合、単なる過少申告であれば追加で支払うべき消費税に約2割が上乗せされる程度で済みます。

しかし無申告加算税が賦課された場合、本来納付すべき消費税と加算税・延滞税を含めると負担は2倍弱の金額なってきます。

延滞税の計算期間の特例

偽りその他不正の行為により国税を免れた場合等を除き、次の場合には一定の期間を延滞税の計算期間に含めないという特例があります。

・期限内申告書が提出されていて、法定申告期限後1年を経過してから修正申告または更正があったとき

・期限後申告書が提出されていて、その申告書提出後1年を経過してから修正申告または更正があったとき

売上を意図的に1000万円以下としている場合には重加算税が課される可能性が高くなる。

税務調査の立ち会いを行っていると売上金額が1000万円を若干下回った申告書を拝見することがあります。

このような場合には、税務調査で消費税の納税義務について理解を問われることになります。つまり課税当局は、消費税の納税義務がないように見せるためにわざと売上をごまかしているのではないかと考えているわけです。ここで「消費税の納税義務がないように見せかける行為」として売上除外をした申告書が作成されたと認められれば無申告重加算税の可能性が一気に高まります。

また、過去に消費税申告や消費税に関する届出をしたことがある事業者の場合、特に「消費税の納税義務がないように見せかける行為」に該当する可能性は高まると考えられます。

具体的な事案として令和6年4月23日裁決事例を確認してみます。(国税不服審判所HPより一部抜粋)

事案の概略

電気通信工事業を営む個人事業主が、消費税等の確定申告書を提出しなかったところ、原処分庁が請求人は基準期間の課税売上高を隠蔽し、又は仮装したところに基づき当該申告書を提出しなかったとして消費税等の決定処分及び重加算税の賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、隠蔽又は仮装の事実はなかったなどとして原処分の一部の取消しを求めた事案。

請求人の確定申告の状況等

  • 請求人は、過去に「消費税課税事業者届出書」「消費税簡易課税制度選択届出書」「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」を提出していた。
  • 請求人は、所得税等について、平成25年分から平成30年分まで及び令和3年分は法定申告期限までに、令和元年分及び令和2年分は国税庁長官が定めた期限までに、本件事業に係る上記各年分の事業所得の総収入金額を、確定申告書及び収支内訳書にいずれも売上1,000万円以下の金額を記載し、原処分庁にそれぞれ提出した。
  • 平成27年課税期間から令和3年課税期間までの消費税等申告書を提出していなかった

争点

請求人に、「偽りその他不正の行為」に該当する事実があったか否か?

審判所の判断

請求人は、税理士に依頼することなく一人で所得税又は所得税等の確定申告書と収支内訳書を作成していたほか、平成24年課税期間に係る消費税等の確定申告を行っていたものと推認され、平成25年課税期間については、その基準期間における課税売上高が1,000万円以下となったとして本件免税事業者届出書を平成25年3月29日に原処分庁に提出しており、自己の判断で消費税等の納税に関する各手続を行っていた。
 これらによれば、請求人は、遅くとも本件免税事業者届出書の提出時点で、課税期間に係る基準期間の売上げが1,000万円以下となれば、法律上、消費税等の申告納税義務を負わなくなるという認識を、自らの経験によって有していたと認められる。

請求人の行為について通則法第68条第2項の規定の要件を充足していたものと認められるところ、同行為は、税額を免れる意図の下にされた、税の賦課徴収を不能又は著しく困難にするような何らかの偽計その他の工作を伴う不正な行為を行ったものということができるから、通則法第70条第5項第1号に規定する「偽りその他不正の行為」に該当する。

以上のことから、売上金額が1000万円以下ぎりぎりの申告の場合には、その理由が特に重要となります。

消費税の納税義務への意識は税負担が大きく異なる部分となるため注意しましょう。

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