税の基本は形式ではなく、実質課税です。
書類のみではなく、取引の実態により判断することが「理屈上は正しい」わけです。
しかし、実務上は、取引実態と同等に重要なものが契約書等の書類です。
税務調査の際も、証拠書類がない場合には、質問応答記録書等を作成し、何とか証拠資料を作ろうと躍起になるほどです。
そこで今回は、実際に調査官はどのような目線で書類を確認するのか?また、チェックのもとになる書類はどのようなものがあるのかをご紹介します。
税務調査に関するご相談
税務調査官が契約書をみる目線
税務調査では、調査官は様々な書類に目を通します。
以下では、最も重要視する契約書について3つのポイントを紹介します。
契約内容(実態との整合性・金額等)
- 取引の実態と合致した契約書になっているか?
- 契約書と取引実態があっているか?
- 取引金額が実際の取引額と一致しているか?
相違する場合には、追加契約書や覚書等が必要になってきます。取引金額が大きく、決算日を跨ぐような取引の場合には、特に厳しく確認されます。
後日作成したものではないか?誰が作成したものか?
- 紙の状態が契約書が作成された日と見合っているのか?
- 自社及び取引先の住所が契約日の住所と一致しているか?
- 手書きで作成したものか?パソコンで作成したものか?
- 取引先の署名部分の筆跡は誰のものであるのか?
最近はほとんどの場合、パソコンで作成されているとは思いますが、パソコンの場合には、ファイルの保存日や取引先とのメール内容などもチェック対象になることもあります。
印紙の貼り忘れ
契約書の中身をチェックするとともに、課税文章に該当する場合には印紙の貼り忘れを確認しています。
印紙の貼り忘れを指摘された場合には、その印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額(すなわち印紙税額の3倍)に相当する過怠税が課されます。取引金額が大きい場合などは特に注意が必要です。
契約書とチェック項目
税務調査では事業者が行う取引について、様々な角度からチェックすることになります。
税務調査において、どのような契約書がどこをポイントとして確認されているのかをご紹介します。
売上関係
- 売買契約書
- 請負契約書
- 基本契約書
- 変更契約書
- 覚書や稟議書 等
これらの契約書でチェックされるポイントは①収益計上基準②取引内容③金額④金額の妥当性⑤取引の妥当性です。
意外にも取引に至る過程などを記載した稟議書もチェックされる書類です。
期を跨ぐような取引、翌期首に売上計上されているような取引は、特に税務調査で時間をかけてチェックします。
仕入・外注関係
- 業務委託契約書
- 領収書
- 請求書
- 見積書・納品書、明細書
- 稟議書
特に外注費と給与の判定の際、業務委託契約書は非常に重要です。実務上、従業員と外注の区別が曖昧なケースを多く目にしますが、税務調査で否認された場合、源泉所得税や消費税の負担など多額の追徴が発生します。
また、関係会社との取引の場合には契約書に記載されている役務提供に実態があるかどうか、金額は妥当かどうかなど厳しくチェックされます。
役員及び従業員関係
- 議事録(株主総会議事録、取締役会議事録、稟議書)
- 社内規定(退職金規定、就業規則、出張旅費規程、出向規定、旅費精算書など)
- 組織図、座席表、タイムカード、従業員名簿、雇用契約書
- 一人別徴収簿、扶養控除等申告書
法人の場合、役員報酬については定期同額給与、過大役員報酬など、お給料に関する縛りが多くあります。そのため、役員報酬の決定を行う議事録はチェックがされます。臨時改定などがあった場合には、改定理由が明らかになるような書類を求められることもあります。
また、実際には存在しない人間や既に退職した人に対してお給料を支払っているように装うことは昔からある脱税の手法です。そのため、組織図、座席表、名簿等と給与台帳とを見比べながら架空人件費がないかを確認します。
更に扶養控除等申告書の提出と源泉徴収の率が一致しているかもチェックしています。
ふとした休憩時間に他の従業員と雑談をしながら、怪しいと思った人が存在しているか?や親族の従業員が会社に実際に来ているか?なども確認しているケースもあります。
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