税務調査が実施され、折衝が進んでくると、今度はどう納税するか?といった問題に直面します。
特に個人事業主の税務調査が行われた場合、本来の納税資金が生活や娯楽に使われてしまっているケースが多く、納税計画をどう組み立てていくかはその後の事業の資金繰りにも直結する大きな問題です。
そして、納税計画を考える中でも、納付が遅れれば遅れるほど重い負担となってくる延滞税の扱いは極めて重要です。
免除制度を上手に利用しながら、計画的に納税を行う必要があります。
延滞税を免除してもらえるケースとは?
免除してもらえるケース
「災害等により相当の損失を受けた場合の納税猶予」を受けたときは、全額が免除の対象となります。
その他、災害等による納税の猶予、事業の廃止等による納税の猶予、換価の猶予が認められた場合には延滞税の二分の一が免除の対象となります。
(免除は納税者による申請と税務署長による職権での裁量免除があります。)
なお、事業廃止等による納税猶予とは国税通則法46条2項③④⑤及び3項とされ、以下のような場合をいいます。
- 事業を廃止した場合
- 事業につき著しい損失を受けた場合
- 法定申告期限から一年を経過した日以後に納付すべき税額が確定した場合
税務調査で利用できるケース
税務調査の際に利用される方法としては「法定申告期限から一年を経過した日以後に納付すべき税額が確定した場合」により申請する納税の猶予です。
修正申告等を提出する前に、一括で納税が難しいと考えられる場合は、納税の猶予を選択し延滞税の減免を申請したうえで、計画的な納税を行っていく必要があります。
※免除とは少し話がそれますが、税務調査でなかなか税額が確定しないような場合に、見込み納付をしておくことにより、延滞税の負担を軽減させておく方法もよく取られる手法の一つです。
免除してもらえる期間
「法定申告期限から一年を経過した日以後に納付すべき税額が確定した場合」により、申請による納税猶予が認められた場合、納期限から1年以内の期間は減免の対象となります。
更に納税猶予の延長が認めらた場合には、延長前の期間と合わせて最大で2年間、免除の対象となります。
税務調査後の延滞税免除はどこまで可能?
延滞税の税率
延滞税といえば、その高すぎる税率ばかりが、
最大 14.6%!!
などと誇張され、クローズアップされていますが、平成31年現在でいえば、クローズアップされているほどの高い率ではありません。(免除が認められればその率は金融機関からの融資の金利と大差はありません。)
延滞税の税率は大きく2つの期間に分けて考える必要があります。
- 納期限から二か月 原則7.3% 例外 特例基準割合に1%を加算した率
- 納期限から二か月以降 原則14.6% 例外 特例基準割合に7.3%を加算した率
特例基準割合は毎年変更され、平成31年であれば1.6%です。
最近では原則ではなく、特例基準割合を用いた延滞税の税率となっています。
実際に免除された場合の効果
納税の猶予や換価の猶予を申請により受けた場合、延滞税は二分の一を減免してもらえることになります。
そして、この二分の一とは正確にいえば、原則の二分の一です。
納期限から二か月以降で考えれば7.3%が減免の対象となり、特例基準割合の1.6%が課される延滞税の率となります。
1.6%であれば、金融機関からの借入と同じ率です。(ただし、経費にはなりませんが)
この率であれば、何とか支払うことが出来るのではないでしょうか?
納税猶予の手続き
以下では、税務調査の際に利用される場合が多い、「法定申告期限から一年を経過した日以後に納付すべき税額が確定した場合」に申請による納税の猶予について確認したいと思います。
要件
次のすべての要件を満たす必要があります。
- 法定申告期限から1年を経過した日以後に税額が確定したこと
- 一時に納付することが出来ない理由があると認められること
- 納期限(修正申告等の場合には修正申告書提出日)までに申請書が提出されていること
- 原則として猶予金額に相当する担保の提供があること
申請のための書類
猶予を受けようとする金額が100万円以下の場合と100万円を超える場合では書類が若干相違します。
【100万円以下】
- 納税の猶予申請書
- 財産収支状況書
【100万円超】
- 納税の猶予申請書
- 財産目録
- 収支の明細書
なお、担保について以下のような場合には提供しなくてもよいことになっています。
- 猶予を受ける金額が100万円以下である場合
- 猶予を受ける期間が3か月以内である場合
- 担保を提供することが出来ない特別の事業がある場合
まとめ
税務調査では、どのように税負担を軽減させるかは非常に重要です。
しかし、無申告や過少申告が明らかな場合には、ある程度の軽減は出来きたとしても限度があります。
ゆえに税負担の軽減を図ることと同じくらい納税計画は重要なのです。
税務調査の連絡が来た際は、負担する可能性がある納税額を事前に検討しておき、納税計画についてもしっかり考えておく必要があります。