税務調査の対応についてご相談を頂く際、過去に行った申告内容についてお話を聞いたり、事業内容などを確認します。
その際、皆さんが必ず聞かれることがあります。
それは「なぜ、うちに税務調査が入るのか?」ということです。
税務調査が実施される理由は様々だと思いますが、今回は最近立ち合いをさせていただいた税務調査について、調査官の会話や指摘事項から得られた情報をもとに実施理由を考えていきたいと思います。
当事務所では千葉県流山市や柏市の税務調査についても対応致します。
ケース1 建設業(個人事業主)
個人事業者として独立後4年目に税務調査の連絡が入りました。
ご相談時に過年度の申告書をお預かりし、実際に税務調査の立ち会いを行いました。
調査内容
申告自体は青色申告で行われており、帳簿書類はきちんと保存されている状態でした。
そのため、帳簿書類を中心に臨場調査自体は1日で終了しました。
調査中に調査官へ私のほうからなぜ、調査に来たのか確認をしてみたところ、以下のようなことをお話しされていました。
- 開業初年度から多額の売上計上(3千万程度)がされている。
- 納税義務について確認をさせて頂きに上がった。
- 青色申告ということで実際に帳簿書類の保存状況を確認したかった。
ポイント
ポイントは「初年度に多額計上された売上高と納税義務の確認」です。
初年度から多額の売上が計上されているのは、おかしいと思い調査にきたわけです。
そのため、開業前から準備状況・預貯金について詳しく確認していました。
(通帳がない分は金融機関へ調査依頼を行い、反面調査が実施されました)
仮に開業前の収入が漏れているのではあれば無申告状態となるわけです。
また、収入金額によっては消費税の納税義務も前倒しになる可能性もあります。
ケース2 不動産賃貸業(個人事業主)
アパートを複数棟お持ちのオーナー様より税務調査の対応依頼を受け、調査立ち合いをさせて頂きました。
調査内容
収入に関しては不動産会社にて一括管理されているため、漏れが生じるはずもなく、一見、調査理由は見当たらない状態でした。
調査項目としても、はじめこそ収入について確認されましたが、収入内容については深堀せず、経費を中心に確認をされました。
その中で一部家事費用があること、専従者(配偶者)への給与の妥当性を確認事項として挙げられました。
とくに重点的に確認されたのは、配偶者の事業への関与がどの程度であったのかということでした。
本事案では配偶者は帳簿書類の作成、不動産会社との連絡を配偶者が頻繁に行っていたこと、専従者給与の額がそれほど多くはなかったことから修正事項としてはあげられませんでした。
途中、調査理由について確認しましたが、「前回お邪魔したときからかなり年月が経ったので」という当たりさわりないことしか教えてくれませんでした。
しかし、調査終了まじかになり、「ところで、保険の満期金が入っているとおもうのですが?」という一言でその理由がようやくわかりました。
ポイント
保険の満期(かなり昔にかけたもの)は税務調査でよく指摘事項としてあがります。
納税者としては、かなり昔にかけた保険だし、税務署もわからないだろうと考えるようです。
しかし、税務署は、保険会社から支払調書の提出を受けており、しっかり把握しています。
今回の調査でも、満期金の計上漏れは確実に修正事項として指摘できるとわかっていたうえで税務調査が実施されました。
修正が確実にとれることがわかっている調査であったので、調査官も余裕をもって調査できるわけです。
ケース3 無申告状態の建設業(個人事業主)
個人事業主として建設業を営んでいる方からご相談があり、税務調査の立ち合いをさせて頂きました。
状況としては、確定申告自体をしておらず、無申告状態でした。
そのため、事前申告を行い対処しました。
調査内容
無申告状態であったため、納税義務の確認にきたというのが調査の理由です。
調査自体は、事前申告を行ったため、半日程度で終了しました。
では、なぜ、無申告であることがわかったのかというと取引先の税務調査です。
税務調査が実施されると、調査対象となった納税者だけではなく、取引先についても情報収集が行われます。
特に個人への支払いについてはしっかり確認を行います。
半面調査のため、氏名・住所・連絡先などを確認していきます。
情報収集したあと、その個人が本当に存在する人物なのか?きちんと申告を行っている人物であるのか?ということを調べます。
(電話番号を聞く理由は国税内部のシステム(KSK)で電話検索も可能だからだそうです。)
本事案も、よく話を聞いてみると数年前に取引先に税務調査が入っていたようです。
おそらく、その時点から、調査候補としては上がっていたものと推測されます。
ポイント
取引先に税務調査が入った場合、その後に税務調査がくる可能性が高くなります。
ご相談に来られる方の中で、無申告状態の方も少なくありません。
臨時収入があったのだが、普段は確定申告を行わないため申告義務があるとは知らなかった方から事業所得があるのに申告していない方まで様々です。
しかし、無申告の方に対し、税務調査が実施される場合には、税務署はある程度の情報を掴んでいると考えて間違いありません。
税務署は国税総合管理システム、通称KSKといわれる情報網をもっています。
このKSKには、国税庁や各税務署が収集した一般調書から税務調査の結果、税務調査で集めた資料せんなどが情報として溜まっている状態だといわれています。
近年では、KSKシステムを駆使し、調査選定も行われているといわれています。
無申告は、無申告加算税と延滞税が非常に重くのしかかってくるため、一刻も早く対処すべき事態です。
特に個人事業者の場合、自己破産をしても納税義務は解消されず、調査実施後は納税証明も出なくなってしまい、資金調達もままならなくなり、事業にも重大な影響を及ぼします。
一刻も早く、対処方法を検討すべきです。
ケース4 せどり(個人事業者)
せどりやアフェリエイトなどの個人事業者も最近は税務調査の対象となります。
調査内容
ご相談者の方は5年ほど前に事業を開始し、以来、青色申告にて申告をされていました。売上も順調に推移(3年前は1千万弱)している状況でした。
調査では、売上について細かく調査していました。特に商品の発送から入金までの流れを確認し、年度づれを確認しているようでした。
調査指摘事項としては、入金基準にて売上計上を行っていたことを指摘されました。
税務上は売上計上は、商品の引き渡しが行われたときで、入金した時点ではありません。
ご相談者の方は几帳面な方だったのですが、会計・税務の知識が乏しく、入金した段階で売上計上を行っていたため、毎年の年度づれ、及び消費税の納税義務判定を1年間誤っていることを指摘されました。
ポイント
売上高が1千万円弱の場合、年度づれにより消費税の納税義務判定がかわることになります。
入金した段階で売上計上しているような場合には、注意が必要です。
※現在、オークションサイトなどに対し、税務署は情報提供依頼を行い、事業者を把握しています。近年では個人の所得漏れをより把握しやすくするため、現在の「依頼」から「要請」に引き上げ情報収集を強化していく動きがあります。
ケース5 電気工事業(個人事業主)
個人事業主として3年、法人成りをして1年目の電気工事業を営んでいる方から個人の所得税に関する税務調査立ち合いの依頼があり対応しました。
調査内容
個人事業主として3年間は青色申告にて帳簿作成を行い、確定申告を行っておりました。
しかし、ご相談頂いた段階で現金売上については計上漏れがある旨のお話しをお聞きし、調査実施日を延長してもらいました。
そのうえで、修正申告書・期限後申告を調査日前に提出致しました。
(調査対象期間は3年という通知でしたが、売上計上漏れ自体は申告していない年度もあり、結局5年分の更正予知前申告にて対応)
事前提出を行ったおかげで調査自体は帳簿内容についても、事前申告にて弊所が内容を確認し、適正に申告をしていることを確認されたうえ、修正した売上の内容のみを確認し、半日程度で税務調査は終了しました。
ポイント
本事案については調査に至った経緯を確認しておりませんが、KSKの情報などで売上の計上もれを事前に把握していたものと思われます。(ただし、お客様の周りで税務調査が実施された人がいないとのことでした。)
これに対し、弊所で売上計上漏れをしっかり把握し申告したことによりスピード解決に至ったと思われます。