確定申告時期になると商工会や相談会場などに申告相談員として多くの確定申告書を拝見します。
多くの税務調査に立ち会いをしているため、申告書類を見ただけで何となくこれは・・・・というものが分かるようになっており、中にはそのまま提出すれば税務調査に選ばれる確率が高いものもあったりします。

あやしい申告書とは?
怪しい申告書とは、当然脱税の匂いがするものです。
とはいえ個人事業主であれば片手間で作成している方がほとんどなのでお粗末な方法で脱税が行われているものが大半です。
今年も相談員をやっていて目についたものを上げてみました。
・決算書の数字が見るからにいい加減。
・利益の数字が少なすぎる。又は赤字が続いている。
・業種や事業内容からしておかしな勘定科目がある。
・同業他社に比べあり得ない比率のものが多い(原価率や外注費割合など)
以下で少し掘り下げてご紹介します。
決算書の数字が見るからにいい加減。
税務調査に選ばれる典型的な申告書がこの「いい加減」が原因です。
代表的なものですとラウンド数字の決算書。ラウンド数字とは100,000円とか0が多くつくものです。
1つ2つなら、あり得ると思いますが、決算書の数字がすべてラウンド数字なんてあまり考えられないため、そのような決算書は何となくで作成されたものであることが容易に想像できます。
利益の数字が少なすぎる又は赤字が続いている決算書
利益が少なすぎる決算書や赤字が数年間も続いている決算書もかなり怪しいと思ってしまいます。
例えば、以下のような家族がいます。
4人家族(奥さんは専業主婦。子供2人は未成年で学生)
住宅ローンが月10万円
事業所得 売上950万円 経費750万円 事業所得200万円
上記のような確定申告書が仮に単年だけなら、まだわかるのですが、このような確定申告書をずっと出し続けている人がいます。
利益200万でローン120万。年間の生活は80万です。
どうやって生活しているのがなぞですよね・・・。
赤字の場合も同様です。普通の人は赤字の事業を何年間もやったりしません。
業種や事業内容からしておかしな勘定科目がある。
最も変な勘定科目の代表例が家賃や水道光熱費です。
例えば、一人で運送業をやっている方がいたとします。
このような方がどこで話を聞いてきたのか分かりませんが、家賃や水道光熱費の大半の金額を経費にしていたりします。
確かに業種によっては家賃や水道光熱費の一部を経費に出来る場合もありますが、家賃や水道光熱費の大部分は自身自身の生活費としか言えないはずです。
必要経費に算入できるものは事業に関係するものだけです。
また、一人で事業をやっている方が福利厚生という名のもと家族旅行を経費に入れていたりもしますがそれは単なる家族旅行であり、福利厚生の余地は微塵も存在しません。
そもそも福利厚生とは従業員に対して行うもので自分に対して行うものではありません。つまり従業員がいないのに福利厚生という勘定科目自体あり得ないはずです。
同業他社に比べあり得ない比率のものが多い(原価率や外注費割合など)
同業者の原価率や外注比率は一般の方が思っている以上に税務署は確認しています。
仕入や外注は特に金額が大きくなるため、ここだけをポイントにして税務調査が実施されることも珍しくありません。(調査対象者と取引先の両方を調査しています)
原価率や外注比率が大幅に変わる場合には決算書の特殊事項のコメント欄に追記などを行っておくことも重要です。
過去に立ち会った調査においても、同業他社に比べて、明らかに粗利や外注比率がおかしいことが調査理由の一つだと聞いたことが多々あります。
まとめ
近年の税務調査選定方法はAIにより誤っている可能性が高いものをスコアリングをしています。スコアリングの詳しい基準は明らかになっていないものの統計を利用していることは明らかにされています。そのため、普段から適正に申告を行うとともにイレギュラーな事項については補足を行っておくことが重要です。