5月は積み残しの税務調査が多く実施されるため比較的軽めの調査が多いですが、最近特に多いと感じているのが還付申告に対する税務調査です。
社会的にもサラリーマンの副業が認められるようになり、ご自身で確定申告を行っている個人の方が必要経費にならないようなものを多額に必要経費に入れ込み、給与に対する源泉所得税について多額に還付を受けているような場合です。
この場合に問題となるのはその収入が事業所得か雑所得かの区分です。
以下では事業所得と雑所得の区分について、条文上どのような記載をされており、実際の税務調査ではどのような判断がされているのかを実務を通じて個人的に感じていることご紹介します。
事業所得と雑所得の区分
所得税法基本通達35-2では以下のように事業所得と雑所得の区分けを行ってします。
収入金額 | 記帳・帳簿書類の保存あり | 記帳・帳簿書類の保存なし |
300万円超 | 概ね事業所得
ただし以下の場合個別に判断する ①収入が僅少と認められる場合 例えば例年(3年程度)300万円以下の収入で主たる収入に対する割合が10%未満 ②営利性が認められない場合 例年赤字で、かつ、赤字を解消するような取組が実施されていない場合
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概ね「業務にかかる雑所得」
ただし、帳簿の保存がない事実のみで所得区分は判定はせず事業所得と認められるような事実がある場合には事業所得として取り扱う |
300万円以下
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「業務にかかる雑所得」 |
税務調査を通じた個人的な見解
事業所得と雑所得の区分は①営利性②継続性・反復性③自己の危険と計算④取引に費した精神や肉体的労力の有無⑤人的・物的設備などを総合的に考慮して決定することが最高裁判例で明らかにされていますが、微妙なケースについては実務上判断することは極めて困難でした。
事業性の判断基準については通達で改正されたとしても原則は変わりませんが、今回、通達で『帳簿』と『300万円』がポイントとなると明記されたことは以前より判断を行いやすくなったことは事実です。
しかし、実際の税務調査では税務署が最も重要視している部分は「例年赤字で、かつ、赤字を解消するような取組が実施されていない」という箇所だと感じています。
それは調査官とこの話題について話をしてみると「給与の足しになるから副業をするわけで、何年も赤字になるなんて事業とは呼べない」と見事に揃って同じ反応を見せることからも分かることです。
そして、実際に税務調査に選ばれる人も数年間赤字を出して給与と損益通算をかけている人が選ばれています。
このことは副業として不動産所得がある人にも同様のことが言えます。
事業所得と雑所得の区分を誤った場合の影響
税務調査が実施されると過年度に戻り、所得税、住民税等の追加納付が発生します。
会社の業務に付随するようにもので副業していた場合には、会社の収入なのか、個人の収入なのかを明らかにするため、会社や取引先に反面調査が実施されることも想定されます。
副業が会社業務とは全く別ものであったとしても個人の所得が税務調査により変更になった場合、住民税については会社に進行年度分についての修正通知が行くため、給与計算をやり直す必要が生じる可能性もあり、会社に迷惑をかけることになります。
また、会社に黙って副業をしている場合には会社にバレる可能性が大きく高まります。
このように副業に関する申告誤りはあなたの本業の立場を悪くする可能性があるため、しっかりと判断を行ったうえで税務申告を行うことが重要です。